カツラは芽吹きから新緑、紅葉、冬木立と四季折々に美しく、大きな木でありながら、枝が細く、木の形も良い、女性的な品の良い木です。

 カツラは「もみじ」同様に秋の風物詩として有名で、香りも良く、病害虫にも強いため、街路樹や庭木としても非常に人気があります。

「もみじ」については ”紅葉の代名詞「もみじ」の特徴と魅力を紹介!” で紹介しております。また、葉が色付く理由については ”紅葉はなぜ赤色なのか?もみじ狩りの由来と魅力を解説!” で紹介しております。ご興味がある方は是非ご覧ください。

桂並木の紅葉名所5選を紹介!

 桂並木の紅葉が有名な名所を5つ紹介します。機会がありましたら、訪れてみるのもよいでしょう。

善光寺(長野県)-ゆかりのあるカツラ並木-

 国宝にも指定されている善光寺は、カツラの木で作られていることで有名なお寺です。また、全国的にも珍しいカツラ並木が表参道に約1.4 kmにもわたって続いています。

 本堂を支える108本の柱には、カツラとケヤキの大木が用いられています。(ケヤキについては ”ケヤキは木によってなぜ紅葉の色が違うのか。良いケヤキの見極め方を紹介!”で詳しく解説してます)

銀座通り(東京都)-東京パラリンピック開催に向けて-

 2020年の東京パラリンピックに合わせて東京・銀座通りの街路樹が「イチイ」からカツラの木に植え替えられました。

 銀座通りはこれまでにも、明治時代は「」や「」が植えられていましたが、初めは土地に合わず10年で枯れてしまったと言われています。

 その後、「」の木に植え替えられましたが、木の老化に伴い、1968年にバラ科のシャリンバイに植え替えられたとされています。

 そして、2004年に銀座通りにふさわしい樹種を選ぶまでの間、試行的に常緑針葉樹「イチイ」が植えられました。

 今回の景観整備により、日本のカツラの木が、人目につく機会が増えそうですね。

カツラの木はなぜ美しいのか?

 その美しさの秘訣は、カツラが育つ環境にあります。

 カツラは気候が涼しく、傾斜が急な谷間を特に好むため、太陽の光が届きにくい谷間では、より効率的に日光を吸収する必要があります。

 その結果、細く繊細な枝を均等に伸ばし、も均等につけるようになったとされています。

カツラの葉はカラメルの香り!?

 秋にカツラの葉は美しい黄葉になり、所々赤みがかかったり褐色が混じっています。

 地上に落ちた葉は1〜2日茶色くなり、甘く香ばしい香りを漂わせます。例えるなら、砂糖醤油せんべいのような香りがします。

 これは、キャラメルの香りにもある「マルトール」という成分によるそうです。

「カツラ」はこのように「香りが出る」=「香出(かず)」から名前の由来になっています。

 また、香りの良いカツラの葉を乾燥させ、粉にしてお香にされるので「香の木(こうのき)」とも呼ばれています。

ハートの形をしたカツラの葉の特徴とは?

 葉の特徴は、ふちがモコモコと波打つ、可愛らしい丸い葉です。新緑でも明るい緑色の爽やかな感じが漂い、やさしいイメージで人気があります。

 カツラの葉の中には、ハートの形をしているものがあります。

 よく見てみると、枝先の新葉はハートの形をしていませんが、枝の付け根に近い古い葉ほど、はっきりとしたハートの形をしています。

 カツラの木を見つけた際は、ぜひ観察してみてください。

善光寺にも使われるカツラ材の特徴とは?

 長野・善光寺にも使われているカツラ材は、香りが良く耐久性があり、木肌が美しいという特徴があり、建材としても非常に人気があります。

 また、カツラは「イチョウ」と同様、オスの木メスの木がそれぞれあります。(詳しくは「植物に「性別」はあるのか!?そのメリットを解説!」で紹介しています)

 しかし、カツラは長寿な木ではあるものの、種子による繁殖力が弱く準絶滅危惧種に分類されています。そのため、最近では供給量が減っています。

 現在では、将棋盤や彫刻品などの工芸品銘木製品に用いられる程度になっています。

京都・葵祭りでも装飾されるカツラの歴史を紹介!

 カツラは紅葉の色づきも美しいですが、4月には枝に美しい赤い花が咲き、5月には青々とした若葉が茂ります。

 5月に開かれる京都・葵祭りでは、葵の葉とカツラの枝葉を絡ませて作られる「葵桂」が飾られていることで有名です。

 葵祭りは「源氏物語」でも取り上げられる由緒あるお祭りであり、カツラの木は古くから御神木として祭られてきました。

 また同様に、出雲地方の伝統的な「たたら製鉄」に従事する人たちは、かつてカツラの木を植え、あがめてきたとされています。

 実は、この「京都・葵祭り」と「出雲・たたら製鉄」には深い繋がりがあるとされています。

 葵祭りの賀茂神社の葵神は雷神であり、雷はのシンボルとされており、また「たたら」は水がもたらせた砂鉄と火からを精製するので、非常に関係が深いそうです。

 さらに、葵祭りでカツラの木が使われている理由は他にも、、、。

 賀茂神社を祭る賀茂氏は、カツラの木ゆかりの地・奈良・葛城(カツラギ)から移ってきたとされています。

 そして、この賀茂氏の祖先は出雲の神大国主(オオクニヌシ)と繋がりを持つと伝えられています。

 そのため、葵祭りではカツラが神聖な木として、装飾されているのですね。

 この他にも、日本には京都・桂離宮や高知・桂浜など「」という固有名詞が多数使われていますね。

 古来から、日本と中国は政治的にも文化的にも大きな関わりがあり、この「桂」を神聖な木とする風習は、中国から伝来した文化であるとされています。

 中国では、月の中に理想や幻想の世界があるとされており、「桂」はそこに存在する神聖な木とされています。「月桂」という言葉は、この月と桂の関係から来ているようですね。

最後に – 日本人にとっての紅葉とは

 ここに猿丸大夫(さるまるだいふ)が書いた有名な小倉百人一首があります。

 奥山に紅葉踏みわけ鳴く鹿の 声きく時ぞ秋は悲しき

 人里離れた奥山で、散り敷かれた紅葉を踏み分けながら、雌鹿が恋しいと鳴いている雄の鹿の声を聞くときこそ、いよいよ秋は悲しいものだと感じられる。

 もの静かで奥深い趣のある歌です。紅葉のさみしい枯れ色を味わえるのは日本の美しい文化ですね。

 歌のように、秋の紅葉の姿を日本人は一つ一つ玩味するように味わってきました。

 鹿の肉が「もみじ」と呼ばれるのは、(うぐいす)が結びつけられたように、紅葉と鹿が連想的に結びついたからであるとも言われています。

 季節に融け込み「枯れ」を親しむことで、紅葉は昔の人と同様、私たちに秋を楽しむ機会を与えてくれます。

「鹿」と「紅葉」の意外な関係性については” ナンキンハゼの紅葉名所は日本で奈良公園だけ?そこには鹿との複雑な関係性があった” で詳しく述べております。

 以上が「桂並木の紅葉名所5選!京都葵祭りに代表されるカツラ紅葉の歴史と魅力を紹介!」の解説になります。最後まで読んで頂きありがとうございます。

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