前回記事に引き続き、日本の森林・林業について紹介していきます。(以下参照)

 前回の記事で紹介した内容として、オーストリアと日本は共に森林率が高い森林国であり、オーストリアでは森林資源の成熟とその活用が、日本より一足早く進んでいます。

 本記事では、オーストリア林業の成功例をもとに森林大国である日本が、今後乗り越えなければならない課題について紹介します。

オーストリアの林業の成功例

 オーストリアの林業が進んでいる背景として、以下の点が挙げられます。

  • 自伐を行わない森林所有者については、まとまった所有林を確保して林業会社へ依頼
  • 林業会社から生産される木材や、自身で伐採を行う森林所有者から生産される丸太の運搬をまとめて運材業者へ委託
  • 生産される丸太をまとまった量で製材工場へ納入

 日本でも、これまで森林組合を中心に森林の経営・管理の集約化が進められていますが、オーストリアよりも所有林規模が小さく、まとまった森林範囲で効率良く作業を行うことが難しい状況にあります。

 また、森林整備と丸太の運搬作業がセットであるため、森林整備を集中して効率良く行うことができていません。

 森林整備は天候にも左右されるため、断続的な作業を強いられています。

 さらに、オーストリアでは製材技術の革新により、製材工場の大規模化が行われています。

 現在、オーストリアでは年間50万㎥を超える大型製材工場が各地に存在しています。

 そのため、日本のように一度木材市場で集積し各製材所への分配を行う必要がなく、直接まとまった丸太が製材所へ集められるため、効率的に木材の生産が行われています。

 日本の場合は、最大規模の製材工場でも年間40万㎥程度であり、近年では年間20万㎥を超える大型の製材所が各地で現れていますが、今後更なる丸太供給体制を整えていく必要があります。

 このように、オーストリアでは所有林の集約化や運搬の効率化、製材所の大規模化が行われています。

 これらの効率化・大規模化を日本でも行うことが可能となれば作業コストが下がり、森林所有者の方へ、その分の収益を還元することが可能となります。

 その結果、森林所有者の主伐(皆伐)後の植林依頼にも結びつき、健全な森林サイクルの形成がなされていくと考えています。

現在の日本の森林状況

 現在、日本の森林面積は国土の約70%(約2500万ha)を占めており、そのうち約60%(約1500万ha)が天然林であり、残りの約40%(約1000万ha)が人工林の構成になっています。(以下の記事参照)

 この約40%(約1000万ha)の人工林の構成樹種は、以下の通りです。

 またオーストリアの人工林の構成樹種は、以下の通りになっています。

 スギとヨーロッパトウヒのha当たりの蓄積量は共に約390m³/haであり、ほとんど差はありません。

 この結果は、日本の人工林資源が充実していることを示しています。

 こうした資源を有効活用することで、 オーストリアの林業の成功例を日本でも再現できることが出来るのではないでしょうか。

最後に -日本の林業が乗り越えなければならない課題-

 今後日本が乗り越えなければならない課題として、現在森林所有者の方の多くの主伐の予定がない状況が挙げられます。

 また主伐が行われる場合でも、主に個々の所有林エリアであり小規模となっています。

 その結果、日本では木材を安定的に供給できるような状況になく、海外からの安価でかつ安定供給の輸入材に国産材が押されている原因となっています。

 このような状況であることから、丸太の供給側である林業会社は、丸太の価格交渉での決定権限が弱く、国産材の価格が下がり、森林所有者への還元が十分になされていない一因でもあります。

 こうした背景から現在、5年の森林経営計画を作成する際は、各所有者の所有林をまとめて、最低でも25ha以上が必要となっています。

 また、森林経営計画に沿って作業を行う際は、1度の作業につき5ha以上を行うことになっています。

 こうした取り組みが行われていくためには、各所有林をまとめる必要があるため、各森林所有者の方のご理解とご協力が必要になります。

 Woodyニュースを通じて、読者の方に現在の日本の森林・林業の現状を少しでも知っていただけると幸いです。

※本記事は「森林・林業白書 (林野庁)」を参照しております。

 以上が「オーストリアの林業の成功例から学ぶ日本の林業が乗り越えなければならない課題とは!?」になります。

 最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

Woodyニュース」はTwitterFacebookでも、自然や森林に関する様々なニュースを配信しています。ご興味がある方はフォローして頂けると幸いです。

 またこの記事を読んで、少しでも森林や林業について関心を持って頂けると幸いです。