ウルシの樹液は、塗料や接着剤、漢方薬として用いられ、木材は漁具の浮き果実は漆ロウとして利用されており、古来から日本人はウルシと関わりながら生活してきました。

※以下、樹木は「ウルシ」とし、ウルシから採取された樹液は「漆」と表記しています。

 現在でも、漆工芸品は「伝統工芸品」として国が指定し、23の地域で生産されています。

 しかし1970年頃までは、漆は津軽塗や秀衡塗、輪島塗、金沢漆器、春慶塗などに使われ馴染みがありましたが、漆器はプラスチックやABS樹脂で代用されるようになり、漆器の多くは合成漆器となりました。

 漆は「耐水性・耐熱性・防腐性」が非常に優れており、現代にも漆に勝る合成塗料は開発されていないとされています。

 また、漆工芸品には独特の味わいや、経年変化と共に生まれる光沢など、漆は日本らしい風情ある魅力も備えています。

 先日焼失した首里城などの重要文化財の修復に必要な漆は、年間2.2トンと試算されており、国産漆の生産量は1.2トンしかなく、大幅に不足している状況です。

 しかし近年は、文化財保護の観点から「ふるさと文化財の森」の取組みにより、徐々に生産量及び、漆掻き職人の数が上向いてきています。(以下の記事参照)

 生産した荒漆の卸価格は1kg当たり5万2000円と言われており、これを精製し、朱色の顔料を加えて、首里城などの文化財に塗る塗料ができています。

 本記事では、漆掻き職人が行う「漆の採取方法」についてご紹介していきます。

 最後までお付き合い頂けると幸いです。

漆はどのように生産されるのか!?漆の採取方法を紹介!

引用:saitoutetuyaさん (instagram)

 漆の採取方法は、ウルシの幹や枝に傷をつけて「乳白色(生漆)」の樹液を採取していきます。

 樹液は空気に触れると、黒色になり固まります。

 これをヘラでかき取る作業が「漆掻き」と呼ばれ、この作業を行う職人を「漆掻き職人」と言います。

 漆の採取は、この黒く固まった漆を、ヘラで耳かき一杯程度の量をすくって集めていく作業です。

 たらたらと漆の木より漆たり ものいふは憂き夏さりにけり

斎藤茂吉

 漆掻きは、6月〜10月までのシーズンの間、4日〜5日のペースでウルシに傷をつけて採取し、シーズンの間に採れる漆の量は1本当たり牛乳瓶1本分(200ml)程であると言われています。

 漆掻き職人は、年間400~500本のウルシから採取し、75kgの漆が採れると一人前とされています。

 また、漆は採取時期により以下のように名称が異なります。

  • 初辺漆」(6月中旬〜7月中旬)
  • 盛辺漆」(7月下旬〜8月下旬)
  • 末辺漆」(9月上旬〜10月上旬)

 7月下旬〜9月上旬に採れる漆が、最も量が採れ、高品質と言われており「盛辺漆」がこれに該当します。

 そして、採取後の漆を「生漆」と呼び、ウルシオールは15%~25%程度含有されています。

 生漆をそのまま塗ると、光沢が悪く乾燥が早いので、濃縮を行い、水分を除くことで均質な漆に精製します。

「殺し掻き」とは!?

引用:saitoutetuyaさん (instagram)

 シーズンの間に、漆を完全に採取してから伐採を行う方法を「殺し掻き」と言います。

 そして、翌年に「萌芽更新」を行います。

 この方法は、薪を生産する雑木林の更新方法と似ています

 萌芽更新では苗木代や植林の費用がかからず、下刈りなどの管理費用だけで済みます。

 また、根がすでに発達していることから、初期成長が早く、漆液を採取するまでの期間が短縮されるなどのメリットがあります。

 通常、15年〜20年で漆を採取することが可能になります。

 この際、切り株から出たウルシは折れやすく、地中から発生した萌芽を育成することが重要になります。

 このように、植林(萌芽更新)→育成→採取→伐採のサイクルを行うため、漆産業は「林業」に位置づけられています。

 また、伐採した木材は黄色く、耐水性があり、加工が容易であるため、花器や額、ペーパーナイフ、盆、皿、椀などに用いられています。

 この耐水性や加工性から、昔はシーズン終了後の冬の副業として、ウルシ材を用いて「漁具の浮き」を作り、釣りを行なっていました。

「養生掻き」とは!?

引用:ninohe_kankoさん (instagram)

 明治時代以前は、2〜3年毎に傷をつけ、ウルシを育てながら漆を採取する「養生掻き」が行われていました。

 現在も中国や台湾、ベトナムなどで「養生掻き」は行われています。

 ただし、漆の採取量は少ないです

 またこの方法は、ウルシを育てながら漆を採取し、果実からは漆ロウを生産するための方法であるため、「和ろうそく」の需要が少なくなった現代では「殺し掻き」が主流になっています。

最後に -浄法寺の漆掻き動画-

 最後に、岩手県・浄法寺の漆掻き動画を紹介します。

 浄法寺漆は国産漆の約70%の生産量を誇り、日本を代表とする産地です

 このように、漆の採取方法は時代と共に変化し、より効率的に行われるようになりました。

 また、漆産業は「林業」の側面もありながら、このように「農業」としての側面もあり、非常に特異的な産業であります。

 今後とも、漆の国内生産量の向上に向けた、漆産業の発展を温かく見守っていきましょう。

 以上が「漆はどのように生産されるのか!?漆の採取方法を紹介!」になります。

 最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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※アイキャッチ画像引用:O-DAN(オーダン)