”モクレン科”は最も原始的なグループです。

 また、春に最も大きな花をつけるのも、モクレン(マグノリア)科の花木です。

 子葉植物の中で、最も原始的な群に分類され、葉に先立って咲くコブシモクレンの花々には清楚な趣きがあります。

 ハクモクレンと区別して、モクレンのことを「シ(紫)モクレン」とも言います。

 ハクモクレンは、モクレンより樹高が高く、高さ20mに達するものもあります。

 白い花が青空に向かって上向きに咲く姿は印象的です。

 コブシによく似たタムシバは、枝に良い香りがあり「ニオイコブシ」とも呼ばれています。

 また、12〜18枚の花弁を持つ「シデコブシ」は、庭木としてよく植えられています。

 同じマグノリア科のホオノキは、その大きな葉に食べ物を盛ったことから「ホウ(包)の木」と名付けられました。

 タイサンボクは、葉も花も全て大型の堂々とした風格を持つ花木です。

 タイサンボクとホオノキは共に、例年5月〜6月に芳香のある白い花を優雅に咲かせます。

 これらハクモクレンコブシタイサンボクホオノキなどの花木は、白色の花を咲かせるため、その見分け方のポイントを押さえておく必要があります。

 本記事では、春の花木”モクレン科”の特徴を紹介し、ハクモクレン・コブシ・タイサンボク・ホオノキを見分ける方法について解説していきます。

 最後まで、お付き合い頂けると幸いです。

”モクレン(木蓮)” – 赤紫色の花を咲かせる花木

 ”モクレン(木蓮)”は落葉小高木〜高木であり、樹高は4m〜5m程度になります。

 また、ハクモクレンと区別して、モクレンのことを「シ(紫)モクレン」とも言います。

 そのため、本記事で紹介する”モクレン科”の中では、唯一「赤紫色」の花を咲かせます。

 庭木や公園樹としてよく植えられており、開花時期は例年3月〜4月頃になります。 

 中国原産の歴史ある花木で、平安時代中期に編纂された「和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」に”モクレン”の名前が記載されています。

 このことから、平安時代以前に中国から渡来してきたとされていますが、詳しい渡来時代は不明です。

 この時代は、モクレンは観賞目的ではなく、漢方では「辛夷(しんい)」と呼ばれる乾燥した蕾を、頭痛や鼻炎の薬とするために植えられたようです。(以下参考記事)

 見分けるポイント

  • 幹に主幹がなく、株立ち状に何本か伸びている。
  • 葉に先立って大型の花を咲かせる。
  • 花色は暗い赤紫色
  • 葉は広い逆さ卵形で長さ10〜15cm。
  • 花弁は6枚

”ハクモクレン(白木蓮)” – 同じモクレンでも白色の花を咲かせる花木

 ”ハクモクレン(白木蓮)”は、落葉高木でモクレンよりも高木になります。

 ハクモクレン中には、高さ20mに達するものもあります。

 中国原産の花木で、庭木や街路樹としてよく植えられています。

 開花時期は、例年3月〜4月頃に白い大型の花を咲かせます

 見分けるポイント

  • 幹は直立し高さ10m〜15m
  • 葉に先立って白い大型の花を咲かせる。
  • 花には強い芳香がある。
  • 葉は逆さ卵形で長さ8cm〜15cm。
  • 花弁はガク片と合わせて9枚

”コブシ(辛夷)” – 里山の代表的な春の風物詩

 ”コブシ(辛夷)”は落葉高木であり、日本各地の森林に自生しています。

 名前の由来は、蕾の形が「握りこぶし」に似ていることから名付けられたとされています。

 そのため、この名前が由来なのか、花言葉も「信頼」や「友情」となっている面白い花木です。

 またコブシには、以前紹介したサクラと同じ「田植え桜」や「種まき桜」といった呼び名があります。

 これは古来では、コブシの開花が農作業を開始する目安とされていたことを意味しています。(以下の記事参照)

 開花時期は例年3月〜4月頃で、香りある白色の花を咲かせ、このように春に先立って香りある花を咲かせることから、春の訪れを告げる里山の代表的な春の風物詩となっています。

 また、葉が大型であるため日陰を作りやすく、庭木や公園樹としてよく植えられています。

 花には”レモンのような香り”があり、蕾と共に花酒花茶に用いられています。

 この蕾を乾燥したものは、モクレンと同じく頭痛や鼻炎の薬として重宝されています。

 コブシの蕾や果実は、噛むと辛みがあり食用にはなりませんが、染料として用いられています。

 また、コブシの樹皮は灰白色で、木材としても建材や床材、家具などに重宝され、コブシから作ったは、金や銀などの研磨材として用いられています。

 見分けるポイント

  • タムシバに似ているが、コブシには花の下に小さな葉がある。
  • 葉に先立って白色の花を咲かせます。
  • モクレンよりも花や葉は小ぶりです。
  • 樹皮は灰白色で滑らか
  • 葉形は卵形
  • 花弁は6枚

”タイサンボク(泰山木, 大山木)” – 堂々とした風格を持つ花木

 ”タイサンボク(泰山木, 大山木)”は、北米原産の常緑高木です。

 葉も花も全て大型の堂々とした風格を持つ花木で、ホオノキと共に、5月〜6月頃に芳香のある白い花を優雅に咲かせます。

 花の香りが非常に良く、タイサンボクの花からマグノリアの香水が作られています。

 よく庭園や公園に植えられており、開花時期は例年5月〜6月頃になります。

 見分けるポイント

  • 樹高は10m〜20m
  • 葉は堅くて厚い
  • 葉は長さ10cm〜20cm
  • 葉の表面は光沢があり、葉裏は褐色
  • 12cm〜15cmの白い大型の花を咲かせる。

”ホオノキ(朴)” – ”朴葉みそ”や”朴葉ずし”で有名な花木

 ”ホオノキ(朴)”は落葉小高木で、別名「ホオガシワ」と呼ばれており、北海道から九州までの温帯を中心に分布しています。

 街路樹や公園樹としても植栽されており、例年5月〜6月頃にかけて大きな淡いクリーム色の花が咲きます。

 またホオノキは、非常に香りの良い花木として知られており、森林にホオノキが1本でもあると、辺り一面が良い香りで満たされます

 朴の葉は40cm程度あり非常に大きく、秋になると黄色に紅葉します。

 この大きさから、冬にホオノキの落葉を見つけやすく、近くに”ホオノキ”のあることが分かります。

 朴葉を使った郷土料理として、岐阜・飛騨の”朴葉みそ”や”朴葉ずし”が非常に有名です。(以下の記事参照)

 見分けるポイント

  • 長さ20cm〜40cmの大型で長楕円形の葉が輪生状につく。
  • 葉の縁が大きく波打っている
  • 葉裏は白っぽい
  • 例年5月〜6月頃に”タイサンボク”に大型の白い花を咲かせる。
  • 樹皮は灰色で滑らか
  • 冬芽は毛がなく筆先のような形

最後に -影の主役”モクレン科”の花木-

 春はサクラが主役となり、各地の桜名所では国内外問わず、多くの観光客で賑わっています。

 その中でも、赤やピンク色の可憐な花を咲かせるバラ科の花木は、”春の色彩のアクセント”となり、より華やかに彩ります。

 対して、モクレン科の花木は、清楚な白色の花を咲かせるため、まだ少し寒い春のスッキリとした青空に映える花木であります。

 小鳥のさえずりが聞こえる中、これから始まる活気ある夏の前の”春の静けさ”を表す花木と言えます。

 一年の始まりに勇み足立ってしまう春を落ち着かせてくれるような、そのような存在であると思います。

 また、このように”モクレン科”の花木を見分けられることで、花見がより一層楽しくなること間違いなしです。

 本記事が、その一助になれば幸いです。

 以上が「春の花木”モクレン科”の特徴を紹介!ハクモクレン・コブシ・タイサンボク・ホオノキを見分ける方法とは!?」になります。

 最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

Woodyニュース」はTwitterFacebookでも、自然や森林に関する様々なニュースを配信しています。ご興味がある方はフォローして頂けると幸いです。