桜(サクラ)は日本の「国花」であり、春の風物詩として日本のシンボルになっています。

 近年サクラは、海外でも「日本桜」として認知が広まり、花見の文化とセットで来日する観光客が多いです。

 桜が舞い散る木の下で酒を酌み交わし、にぎやかに楽しむ習慣は日本独自の文化で、サクラ&イベントを楽しみたい外国人観光客が中心だそうです。

 以下の記事で、サクラに対する海外の反応についても紹介しております。

 万葉集では、サクラよりも梅(ウメ)の方が、数多く読まれています。

 そのため、春のサクラを愛でる文化が貴族の間で広まったのは、平安時代以降であると言われています。

 そして、お花見の文化が始まったのもこの頃です。

 平安時代の貴族たちは、サクラを愛でては和歌を読み、宴を開いて楽しんでいました。

 平安時代では、サクラは「華やかで美しく、気高い花木」とされています。

 このことから、源氏物語に登場する「紫の上」は「樺桜の君」と呼ばれ、理想の女性像として描かれています。

 また樺桜は、華やかに咲き誇る「ソメイヨシノ」ではなく、清楚で気品のある「ヤマザクラ」とされています。

 このようにサクラは品種が多く、樹種も似ています。

 自生種だけで100種類以上、園芸種は300種以上にも及びます。

 江戸時代になると、花見が行楽行事として一般に広がり、歴代の徳川将軍は河川や山にサクラを植林し、花見の名所を増やしました。

 この際にサクラの品種改良が進み、品種が増えたとされています。

 このため、300種類以上にも及ぶサクラを識別するのは至難の技です。

 本記事では、一般的なサクラの品種と見分け方についてご紹介しています。

 最後まで、お付き合い頂けると幸いです。

[まとめ]日本のシンボル”桜(サクラ)”の種類と見分け方を紹介!

 開花順に並べると、春のお彼岸頃にまず「エドヒガンザクラ」が咲きます。

 そして、4月の初旬に「ソメイヨシノ」「ヤマザクラ」「オオシマザクラ」と順に続きます。

 4月の中旬から下旬にかけては、俗に「八重桜」と呼ばれる「サトザクラ」の花が開花します。

 また、花が咲き終わった後でサクラを見分けるポイントは、葉と樹皮になります。

 葉には鋭い重鋸歯があり、葉の付け根には「蜜腺」があるのが一般的です。

 この蜜腺によってアリを集め、毛虫などの害虫から身を守っています。

 樹皮は、暗褐色や暗灰色であり、横に切れ目が入る樹木が「ヤマザクラ」になります。

最も多く植えられている「ソメイヨシノ(染井吉野)」

 現在、日本で植えられている70%は「ソメイヨシノ」です。

 東京で、最も身近なサクラでもあります。

 葉に先立って開花するのが特徴であり、花の色は開花直後に薄いピンク色で、徐々に白くなっていきます。

「サクラ切るバカ、梅切らぬバカ」という言葉の通り、サクラは非常に繊細な樹木です。

 そのため乾燥や潮風に弱く、寒い地域では花の形が綺麗でないと言われています。

 そのため、ソメイヨシノは東日本に多いとされています。

 ソメイヨシノは、江戸時代に「エドヒガンザクラ」をに、「オオシマザクラ」を自然交配した伊豆半島のサクラを、江戸の染井村の植木屋が発見し「吉野桜」と名付けました。

 その後、奈良・吉野山の「ヤマザクラ」と名前が混同しやすいことから、1900年に「染井吉野」と改名されています。

桜前線」があるのは「ソメイヨシノ」が、全て接ぎ木挿し木で繁殖されているためです。

 そのため、全てのソメイヨシノには個体差がなく開花条件が揃うと一斉に咲きます。

 ソメイヨシノは7月下旬に花芽を付け、最高気温7℃以下の日が一定期間続く、1月中旬に花芽が動き出し、一斉に開花に向かいます。

 これは1995年に京都大学が、全国で採取したソメイヨシノの個体の遺伝子調査によって、明らかになりました。

 さらに2014年の行われた遺伝子解析によると、47%が「エドヒガンザクラ」で、37%が「オオシマザクラ」、11%が「ヤマザクラ」であり、残りの5%はその他の樹種になります。

 また、ソメイヨシノはクローンであるため、病虫害が発生すると、一気に枯れてしまう点が懸念されています。

 遺伝子的に離れた個体を作るメリットについては、以下の記事で紹介しております。

 そのため近年、外来種の「クビアカツヤカミキリ」による被害が拡大しており、環境省が「特定外来生物」に指定するなど対策を進めています。

 また現在、枝にこぶが出来る症状が見られ、枝を剪定するなどの対策もなされています。

 このような状態のサクラを見分けるには、花の枚数を数えるという方法があります。

 1つの芽に対して「花が何枚咲いているか」によって、サクラの健康状態を調べていきます

 以下に花の枚数による、サクラの健康状態を示しています。

  • 非常に健康:6枚
  • 健康である:4〜5枚
  • 健康でない:3枚以下

 ソメイヨシノの名所では、通常3〜4枚の場合が多く見られますが、管理が行き届いている場所では、4〜5枚の花を咲かせています。

森林に最も多く自生している「ヤマザクラ(山桜)」

「ヤマザクラ」は、主に西日本の山地に自生する「日本桜の代表」です。

 京都・嵐山奈良・吉野山などがヤマザクラの名所として知られており、古くから和歌に詠まれるなど日本人との付き合いは長いです。

 また、本種をとするサクラは多く、300種以上の園芸種の多くは「ヤマザクラ」と交配されたものであります。

 樹皮が暗褐色で、横に切れ目が入っている点が「ヤマザクラ」を見分けるポイントです。

 また赤褐色の若葉が、花と同時に出てきます。

 このように、花に葉が混じる点がソメイヨシノとの違いです。

「ヤマザクラ」は苦味がありますが夏にサクランボが実り秋の紅葉は他の園芸種よりも美しいことで有名です。

 このように「ヤマザクラ」は、四季を通して私たちを楽しませてくれます。

 また、花の色は白が基本色でありますが、薄いピンク色を帯びるものあります。

 自然に自生しているため、このように花にバリエーションがあります

 旅行した際に、各地のヤマザクラを見比べてみるのも良いですね。

エドヒガンザクラ(江戸彼岸桜)

 他のサクラよりも開花時期が早いのが特徴です。

 春の彼岸の頃に咲くことから「エドヒガン」や「アズマヒガン」と呼ばれています。

 または、別名「ウバヒガン」とも呼ばれています。

 本州以南の山地に自生しており、花は薄ピンク色のものが多いですが、白いものもあります。

「エドヒガンザクラ」は、サクラの中では最も寿命が長く、樹齢が1000年を超えると伝わるものもあります。

 また「ヤマザクラ」と同様、サクランボを実らせ、酸味が強いのが特徴です。

 樹皮は、年を経るにつれて「柿の木」のように剥がれていきます。

オオシマザクラ(大島桜)

 葉と花が同時に開くのが特徴です。

 また、樹皮は暗灰色であり、花に香りがあることから区別することが出来ます。

 本州の伊豆半島や伊豆七島に分布しており、葉が「桜餅」に用いられることで有名です。

 花は5で、色は白色が一般的です。

サトザクラ(里桜)

 一般的に「ヤエザクラ(八重桜)」と呼ばれています。

 この中でも「カンザン(関山)」と呼ばれる品種が、代表種です。

 花は大きく八重咲きで、ピンク色が濃いのが特徴です。

オオシマザクラ」の変種と考えられており、他のサクラよりも開花時期は遅いです。

 また、実を結ばないのも特徴です。

 花弁は、塩漬けにして「桜茶」に用いられています。

カンヒザクラ(寒緋桜)

 葉に先立って濃い紅色の花が垂れ下がって咲くのが特徴です。

「エドヒガンザクラ」と同様、開花時期は早くヒガンザクラ」とも呼ばれています。

 関東以南に分布し、沖縄県などで野生化しています。

 その鮮やかな紅色から、花言葉は「艶やかな美人」です。

チョウシザクラ(丁子桜)

 香辛料の原料となるモルッカ島原産の「丁子(クローヴ)」に似る、筒型の花を咲かせることから「丁子桜」と名付けられています。

 チョウシザクラは、本州と九州の一部に自生するサクラで、花が小さいのが特徴です。

 サクランボは8月頃に黒く熟し、甘く食用になります。

リョクガクザクラ(緑萼桜)

 葉や枝、ガクが鮮緑色であり、花の色は純白です。

 そのため、別名「ミドリザクラ」とも呼びます。

 富士山や箱根山などに分布しているため、「フジザクラ」や「ハコネザクラ」とも呼ばれています。

ウコンザクラ(鬱金桜)

「サトザクラ」の一種で、花の色がサクラの中で唯一”淡黄緑色”です。

 ウコンの黄色と、花の色が似ていることが名前の由来です。

 また「黄桜」で有名な日本酒の名前は、この「ウコンザクラ」を指しています。

 しかし「ウコンザクラ」の花は、時間が経つにつれて白くなり、最後にはピンク色になるため、見分けるのが難しいです。

「ウコンザクラ」は庭園などでよく見られ、「サトザクラ」と同様に樹皮は灰褐色で光沢があります。

 また「ヤマザクラ」と同様、樹皮が横に裂けるのが特徴です。

フユザクラ(冬桜)

 秋から冬にかけて咲くサクラで、葉が小さいので「コバザクラ」とも呼ばれています。

 春にも花を咲かせるため、年に2回花を咲かせます。

 そのため他のサクラと比べ、樹木全体に花が咲かず”まばら”です。

 これらの点から、他のサクラと見分けることが出来ます。

 また「ウコンザクラ」と同様、よく庭園などで植栽されています。

最後に -サクラの不思議-

 サクラは日本の国花でありますが、開花する時期以外には、あまり見向きもされない不思議な樹木です。

 桜前線が過ぎ、葉ザクラの時期も過ぎると、花見で賑わっていた春も終わりを告げます。

 また、澄み切った冬空に凛と咲く「フユザクラ(冬桜)」の花言葉は「冷静」です。

 このように花言葉は季節によって、花への見方が変わる日本人の心を指しているのでしょうか。

 以上が「[まとめ]日本のシンボル”桜(サクラ)”の種類と見分け方を紹介!」になります。

 最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

 サクラは、東京ではイチョウやプラナタス、トウカエデに次いで多い身近な樹木ですが、散ると見分けることが難しくなります。(以下の記事参照)

 ぜひお花見の際に、サクラの花や葉、樹皮を観察してみてください。

 本記事が、その参考になれば幸いです。

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