日本は気候上、関東より北部の”温帯地域”と、関東より南部の”暖帯地域”に大きく分けられます。

 ”温帯地域”では、ブナを中心とする”落葉広葉樹”が自生し、”暖帯地域”では、シイ・カシ・タブノキシロダモ・クスノキといった”常緑広葉樹”が広く分布しています。(以下の記事参照)

 そして、これら両者のちょうど中間に位置するのが”東京”です。

 高野山や奥多摩の森林地域に”ブナ林”が見られ、また平地ではシイ・カシなどの常緑広葉樹もふつうに見かけることができます。

 そのため、東京は樹木を観察する上では、とても適した地域です。

 本記事では、”常緑広葉樹”に焦点を当て、公園でよく見かける”シイ・シラカシ・アラカシ・ウベメガシ”を見分ける方法についてご紹介していきます。

 最後まで、お付き合い頂けますと幸いです。

海岸地域は”シイ”/内陸地域は”カシ”

 ”シイ”や”カシ”の常緑広葉樹は「照葉樹」とも呼ばれています。

 これは”ツバキ(椿)”と同じく、葉の表面に”光沢”があることが由来です。(以下の記事参照)

 九州から関東までの”暖帯地域”の中で、海岸地域は”シイ”や”タブノキ”を中心とした照葉樹が自生しています

 一方で、その”内陸地域”では”カシ”を中心とした照葉樹が分布しており、これらの”常緑高木”は、”神社仏閣”の境内や、古い農家の”屋敷林”でよく植えられています。

 また、公園内のピクニック場所として、これらの大きな木の下で賑わいを見せています。

 そして、明治神宮・浜離宮庭園・小石川植物園など、古くから知られる公園の高木ほとんどが、この”シイ・カシ・ダブノキ・シロダモ・クスノキ”のような”常緑広葉樹”です。

※浜離宮庭園については、以下の記事で紹介しています。

 したがって数種を覚えれば、東京近辺に生息する常緑広葉樹の高木をマスターすることができます。

 ”カシ類”は数多くありますが、関東近辺で見られるのは”シラカシ”で、関西では”アラカシ”が多いです。

 このほか、アカガシイチイガシツクバネガシウラジロガシなどの常緑高木があります。

 さらには近年、”街路樹”としてよく見られる”ウバメガシ”のような常緑小高木も人気があります。

”シイ(椎)” -鎮守の森を形成する代表的な樹種-

 ブナ科の常緑広葉樹の高木で、”スダジイ”と”コジイ(ツブラジイ)”があり、ともに「シイ(椎)」と呼ばれています。

 その中でも、東京近辺でよく見られるのは”スダジイ”の方です。

 また、”コジイ”の樹皮はなめらかですが、”スダジイ”の樹皮は縦に割れ目があることで区別できます。

 ともに生食できる”ドングリ”がなり、火で炙ると香味が増しおいしいとされています。

 ”シイ(椎)” は寿命が長く、枝や幹が分岐し、精霊が宿りそうな”ブロッコリー状”の樹形です。

 そのためか、いわゆる”鎮守の森”を形成する代表的な樹種とされています。(以下の記事参照)

 また、材木として利用しにくいことが幸いしてか、中には樹齢500年を越すとされる巨木が各地に残り、国や地方自治体の天然記念物に指定されています。

見分けるポイント

  • 葉裏がうすい褐色。
  • 葉に”燻した金属”のような独特な光沢がある。
  • 葉の長さは5〜15cmで卵形。
  • 樹皮は縦に割れ目がある。

”シラカシ(白樫)” -関東地域に見られるカシ類-

 ブナ科の常緑広葉樹の高木です。

 東京近郊では、”ケヤキ”の大木と並んでいる高木が”シラカシ”です。(以下の記事参照)

 関西では”アラカシ”を、四国や九州では”アカガシ”を指すことが多いです。

 ドングリ以外に大きな特徴はなく、”平凡な木”という印象ですが、カシ類の中では耐寒性が強く、大木でも移植できるため庭造りには重宝されています。

 また”アラカシ”など、他の木と同じく”雌雄同株”であり、開花時期は4〜5月です。

※雌雄”異”株については、以下の記事で紹介しています。

見分けるポイント

  • 葉は5〜15cmで、先が細長く尖る。
  • 葉に短い”鋸歯”がある。
  • 樹皮は”黒色”。
  • ドングリの”ヘタ(お椀)”には横筋がある。

”アラカシ(粗樫)” -特徴がないことが特徴の樹木-

 ブナ科の常緑広葉樹の高木です。

 ”暖帯地域”の森林に自生し、関西より西ではよく見られる樹木です。

 かつては、”カイズカイブキ”、”ウバメガシ”と並んで、関西の三大生け垣用の樹として、ウバメガシに次いで人気がありました。

 4〜5月に花が咲き、秋になると直径2cmほどの”ドングリ”がなります。

 名前は、”葉”や”枝振り”が粗っぽいことに由来しており「粗い樫→アラカシ」となりました。

”シラカシ”と同じく、”特徴がないことが特徴の樹木”です。

見分けるポイント

  • 葉は逆さ卵形で先端にのみ”鋸歯”がある。
  • 葉は厚く、裏は白っぽい。
  • 葉の裏には、薄い毛がある。
  • ドングリの”ヘタ(お椀)”には横筋がある。

”ウバメガシ(姥目樫)” -カシ類の中でもっとも強い樹木-

引用:photo AC

 ブナ科の常緑広葉樹の小高木です。

 ”暖帯地域”の海津地方に多く自生しており、近年”街路樹”としてよく植えられています。

 これは、”カシ類(シラカシ・アラカシ・アカガシ)”の中でもっとも”病虫害”や”都市環境”に強いためです。

 しかしながら、成長は遅いですが、そのため幹の太い老木は重宝されます。

 4~5月には、他のカシ類と同じく花が咲き、その後に実る”大きめ”のドングリは食用になります。

 しかしながら、ドングリは枝から落ちやすく、収穫のタイミングが難しいです。

見分けるポイント

  • 葉の長さは3〜6cmで、”カシ類”では小さい。
  • 葉は逆さ卵形。
  • 葉の上半部には”鋸歯”がある。
  • ドングリの”ヘタ(お椀)”には”りん片”が密生。

最後に – まずは”4種”から

 シイ・カシ類は”常緑高木”であり、存在感がある樹木であります。

 しかしながら樹種が多く、実際にはよく観察しないと見分けづらいです。

 そのため、本記事で紹介した“4種”の特徴をおさえて、チャレンジしてみてください。

 それぞれの広葉樹の名前の覚え方は、以下の記事で紹介していますので、こちらも参考にして頂けますと幸いです。

 以上が 「公園でよく見かける”常緑高木”を紹介!シイ・シラカシ・アラカシ・ウベメガシを見分ける方法とは!?」になります。

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