”森林”を構成する樹木は、光合成により”二酸化炭素を吸収”し、炭素(C)を体内に蓄えています。

炭素(C)の役割
・根や幹、枝葉を構成する物質。
・光合成により糖となる成長のエネルギー源。

 一方で、昼夜問わず行われる呼吸活動により、”二酸化炭素を排出”しています。(以下の記事参照)

 一般的に、樹木が成長を始めてから40年ほどは「青年期」と呼ばれ、活発に光合成を行い成長し続けています。(以下の記事参照)

 そして、その後急速に成長が遅くなり、二酸化炭素の吸収量が減少していきます。

 一方で、土壌の中には”倒木”や”落ち葉”などの植物の遺骸由来の有機物が存在します。

 これらは”小型動物”や”菌類”の餌となり、分解され、やがて二酸化炭素となって大気に排出されていきます。

 本記事では、二酸化炭素の削減に貢献する”森林”と”土壌”の役割と関係性について紹介していきます。

 最後まで、お付き合い頂けますと幸いです。

二酸化炭素の削減に貢献する”森林”と”土壌”の役割と関係性を紹介!

 まずは、”樹木の成長”と”二酸化炭素”の関係性について考えていきます。

 樹木は、幼年期である10年生までは、あまり二酸化炭素を吸収しません。

 以下のグラフからも、樹齢とともに二酸化炭素の吸収量が増加し、樹齢11〜40年までの青年期がもっとも光合成効率がよいとされています。

 対して、”土壌”と”二酸化炭素”の関係性について見ていきます。

 前述の通り、土壌の中には”倒木”や”落ち葉”などの植物の遺骸由来の有機物が存在しています。

 これらはやがて分解され、この過程で二酸化炭素を排出します。

 この土壌からの二酸化炭素の排出量は、樹木が20年生までに最も放出量が大きくなります

 そして、その後の21年生以降は、相対的に低い値で排出量は一定となります。

 そのため、森林全体で考えると、

二酸化炭素の吸収量 (呼吸による排出量 + 土壌による排出量)

 となります。

 以上の結果をまとめますと、

・”〜10年生” :CO2排出
・”11〜40年生”:CO2吸収
・”41年生〜” :CO2吸収量が徐々に減少(最終的には収支ゼロ)
※専門家によって見解が異なります。

 このように、幼年期10年生までは”二酸化炭素の排出”となりますが、それ以降は二酸化炭素の吸収に転じ、増加していき、40年生以降は熟年期となるにつれて減少していきます。

 以上から、青年期はもっとも活発に大気中の二酸化炭素の吸収することが分かります。

 そのため、地球温暖化を抑止する面で考えると、11年〜40年の樹木で構成されている森林がもっとも理想的な状態であり、この状態を維持するために”森林サイクル”を形成する必要があります。

森林の若返りを目指す取り組み

引用:O-DAN(オーダン)

 現在、パリ協定が策定され”HWP製品”が注目されています。(以下の記事参照)

 これは、木材に含蓄されている炭素(C)量を、二酸化炭素の削減量として計上する制度です。

 これにより、環境に優しい木材製品の利用を促進させ、光合成の活発な青年層の多い森林へ若返りさせる狙いがあります。

 世界の各地域で森林が保有する炭素量を見ると、

森林の炭素(C)含有量 (1ha当たり)
・熱帯雨林  :350t
・落葉広葉樹林:200t
・タイガ   :80t

 東南アジアの熱帯雨林地域では背の高い樹木が多く、1ha当たりの森林に含まれる炭素量は約350tです。

 この炭素量は、日本の落葉広葉樹林では約200t、シベリアの針葉樹などの亜寒帯地域では約80tであることからも、樹木の大きさに応じて炭素の含蓄量は比例していることが分かります。(以下の記事参照)

最後に – 森林内の土壌の役割

引用:O-DAN(オーダン)

 このように、二酸化炭素の削減に対する森林が担う役割に期待が集まっていますが、実は”土壌”にも炭素(C)が多く含まれていることはご存知でしょうか。

 ”倒木”や”落ち葉”、”腐った根”など、植物の遺骸由来の有機物などから形成される”土壌”にももちろん炭素(C)が多く含まれています。(以下の記事参照)

土壌の炭素(C)含有量 (1ha当たり)
・熱帯雨林  :100t
・落葉広葉樹林:180t
・タイガ   :220t

 森林と同様、1ha当たり地下1mまでの土壌に含まれる炭素量を比較すると、熱帯雨林地域では約100t、温帯では約180t、冷帯では約220t含まれています。

 このように、森林の炭素含有量が少ない地域では、その分土壌に炭素が多く含まれていることとなり、森林はバランスを取れた生態系を形成していることがわかります。

 樹木が死ぬと、有機物は腐って二酸化炭素へと分解しますが、腐りにくい部分は土壌に還元されていきます。

 暖かい地域ではそれだけ、腐るスピードも速くなり、土壌に炭素はあまり貯まりませんが、反対に寒い地域は、落ち葉などは腐りにくく、土壌に厚く溜まって含積されていきます。

 これらの点から考えると、”林業”はやはり”農業”に近い側面を持っています。(以下の記事参照)

 このように、地球温暖化が問題となっている現在、私たちは森林とうまく共存・共生しながら付き合っていく必要があります。

 以上が「二酸化炭素の削減に貢献する”森林”と”土壌”の役割と関係性を紹介!」の解説になります。

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 またこの記事を読んで、少しでも森林や林業について関心を持って頂けると幸いです。