近年、東京では都市部のヒートアイランド現象が社会問題となっています。

 ヒートアイランド現象とは、都市の規模が拡大するにつれて、その中心部の気温が郊外よりも高くなる現象で、昼間ははっきりとはしないですが、夜間に気温の逆転層が発達したときに顕著に見られます。

 また、この現象を表す言葉として「熱帯夜」と呼ばれる造語が有名です。

 これらの言葉で表される気温上昇を緩和させるため、街路樹を植える”都市の緑地化”が期待されています。

 街路樹を植えることができれば、その箇所に木陰ができるため、”蒸散作用”や保水力を持った土による”気化熱の効果”により気温上昇を防ぐことができます

 このような街の緑地化は、ヒートアイランド現象の対策として”最も効果的”であるとされています。

 また一方で、都市部で緑地化できる場所は街路だけでもあるため”唯一の対策”であるとも言えます。

 このように期待される街路樹ですが、気温上昇を抑制する効果の他にも、以下の効果が期待されます。

  • 街並みの景観を良くする。
  • 強風を防ぐ。
  • 車の排気ガスや騒音を緩和させる。
  • 夏の強い日差しを遮断する。
  • 火事の延焼を防ぐ。
  • 建物が道路上へ倒壊するのを防ぐ。
  • 運転の視線誘導に役立つ。

 このように街路樹は都市の景観を良くし、都市環境を保全・向上を図るだけではなく、防風防塵防煙防暑防火の役割を担っています。(以下の記事参照)

 本記事では、ヒートアイランド現象と熱帯夜の定義を説明し、街路樹は本当に気温を下げることができるのか!?という点について解説していきます。

 最後までお付き合いいただけると幸いです。

都市部の街路樹は成長スピードが早い!?

 まず始めに、都市部に植えられている街路樹が置かれている環境について紹介していきます。

 以下の論文で、都市部の街路樹は、郊外の樹木よりも約4倍のスピードで成長しているという研究結果が発表されています。

They found that young street trees grow much more rapidly than their forest counterparts, and attribute this to more available light, open growth conditions, elevated carbon dioxide, more nitrogen and a longer growing season due to warmer conditions in urban “heat islands”.
引用:COSMOS

 上述の英文を翻訳すると、都市部の街路樹の成長スピードが早い理由として、以下の点が挙げられています。

  • 街路樹1本ずつに当たる光の量が多いこと。
  • それぞれの街路樹に与えられるスペースが広いこと。
  • 光合成の原料となる二酸化炭素が多いこと。
  • 肥料となる窒素化物が多いこと。
  • ヒートアイランド現象により、都市部は暖かいこと。

 これらの要因が、都市部の街路樹の成長を促しているとされています。

 しかし補足すると、都市部は必ずしも街路樹に適した環境ではなく、地面が硬いコンクリートである点など、樹木が大きくなるにつれて根が広げられる範囲は限られていきます。

 また、剪定による過剰な刈り込みなどによっては、街路樹が枯死してまう危険性も拭えません。

 以上のように都市部に植えられる街路樹には、これらのメリットとデメリットが存在しているようです。

ヒートアイランド現象とは!?

 ヒートアイランド現象とは、都市部の気温が”郊外”に比べて高くなる現象です。

 この現象は「地表面の人工化」や「人口排熱の増加」が原因となり、引き起こされる環境問題として注目されています。

 また気温上昇により、熱中症などの健康被害や、集中豪雨の増加、生態系への影響などが問題となっています。

地表面の人工化」とは、アスファルトなどにより、それまで”緑地”や”裸地”だった場所が人工物で覆われことを指しています。

 この結果、”蒸散作用”により水蒸気として逃がしていた熱量が減少し、ヒートアイランド現象を引き起こす原因となっています。

 またアスファルトによる、太陽熱の反射率の低下も気温上昇の原因となっています。

 実際夏季には、アスファルトの表面温度は50〜60°C程度まで達するとされており、日中に蓄えられたこれらの熱は、夜間の気温低下を妨げています

 一方「人口排熱の増加」も、ヒートアイランド現象を引き起こす原因とされています。

 都市部では、”車”や”空調設備”から大量の排熱が発生しており、これらの人口熱が気温を上げる要因とされています。

熱帯夜の定義とは!?

熱帯夜」という言葉は、気象エッセイニスト”倉嶋厚”さんが作った造語として知られています。

 そのため、英語でも”Tropical Night”とは書かず、海外でも”Nettaiya”と明記されるようになっています。

 しかし、この「熱帯夜」の言葉の定義は曖昧であり、便宜上「1日の最低気温が25℃以上の日」を指すとされています。

 実際に”熱帯地域”や”砂漠地域”であっても、夜から早朝にかけては非常に寒く、たとえ最低気温が25℃の場合でも、昼間の最高気温が40℃を超えると、夜は身震いするほどの肌寒さとなります。

 そのため「熱帯の夜は熱帯の冬」と言われているのは、この夜の気温低下によるためです。

 そのため、現在一般的に使われる「熱帯夜」という言葉は、熱帯地域のイメージからくる”誤認”であると考えられます。

 しかしながら、森林は木々の樹冠で覆われており、日中は”日陰効果”で気温は低く夜間は樹冠による温室効果で放射冷却が抑えられ、林外よりも暖かくなります

 この効果により、森林内の1日の温度変化は小さくなります。

 これを一年を通して見てみると、夏は比較的に涼しく、冬は比較的暖かいということになります。

 これらの点から考えると、森林が広がる熱帯地域の”夜”は暖かくなり、他の地域と比べると相対的には「熱帯夜」であると考えることが出来ます。

樹木の種類や分布は強く気温の影響を受けやすい!?

 樹木はその大きさの割には、相対的に熱の発生量が少ないとされています。

 また、熱の放出を妨げないように表面の面積が広いことから、”変温性”あるいは”外温性”の植物とみなされています。

 すなわち、樹木の体温は”外界の温度の変化に応じて著しく変化している”ということになります。

 このように、樹木は体温の調節機能を持っておらず、例えば、気温が低い夜から早朝にかけては体温を放出し続けることになります。

 その結果、身近では以下の現象を実際に見ることが出来ます。

・葉温が外気温よりかなり下がり、早朝には霜が降りる
・樹木の幹の太陽に面する反対側の体温が30度まで上がる

 また一般的に、光合成により産出される熱は速やかに消散するため、周りの気温を高めることはないです。

 しかしながら呼吸活動によっては、体温が多少上昇するとされています。

 以上が、樹木の体温を制御する機能が乏しい理由の解説になります。

 実際に、外界の気温は”地域”や”標高”によって変化するため、体温の調節機能が乏しい樹木の種類や分布は、強く気温の影響を受けやすいです。

 一般的に、”地域”によって気温が変化する理由は、例えば経度が高くなり赤道から離れるほど、真昼の太陽の角度が小さくなり平均気温が低くなるとされています。

 一方で、”標高”が高いほど低温となるのは、下からの暖かい空気が上昇するにつれて、空気が膨張し、放熱により冷却されることが主な原因です。

 その結果、標高が100m上がると、平均気温は0.5℃〜0.6℃下がるとされています。

 このように”地域”や”標高”によって、様々な樹種が見られるのは、これらの外的要因であると考えられます。

古代4大文明と砂漠化の関係性とは!?

引用:O-DAN(オーダン)

 水辺は例外なく、樹木による”緑地化”以上に気温を下げることができます

 そのため水源の利用はもちろんのこと、かつての古代4大文明は全て、大河のほとりに繁栄してきました。

 エジプト文明やメソポタミア文明、インダス文明や黄河文明も然りです。

 しかしインダス文明のように、かつてはそれほど顕著な砂漠ではなかった都市が、発達するにつれて、レンガ造りに必要な燃料のための樹木が伐採され、砂漠化が加速されていく場合もあります。

 また、黄河文明の中心地は砂漠ではないですが、その上流領域は砂漠です。

 黄河という名前も、砂漠化が進んで黄色い土砂が流れ込んだことから名付けられています。

 このように砂漠気候の地帯に都市が発達するということは、「都市の砂漠化」を強化する事に繋がります。

 これを和らげてくれるのが、緑化による”オアシス効果”ですが、果たしてその””は低温化をもたらしてくれるのでしょうか。 

街路樹は本当に気温を下げることができるのか!?

 街路樹は、”日光の遮断”や”蒸散作用”によって気温の上昇を抑えることができます。(以下の記事参照)

 実際に、”木陰”と”アスファルト上”の体感温度を計測すると、平均15°Cの温度差が確認されています。(参考:都市緑地化機構)

 これにより小規模レベルでは、木陰で涼しさを感じることができ、体感温度の上昇を緩和することができます。

 しかし、ヒートアイランド現象を緩和するためには、更なる大規模な緑地化が必要とされています。

 緑地化により得られる効果を以下にまとめます。

・”クールアイランド”と呼ばれる”冷涼な空気のかたまり”を形成。
冷涼な空気の移動をスムーズにする。
・光合成による温室効果ガス(二酸化炭素)の削減。(以下の記事参照)

”クールアイランド”と呼ばれる”冷涼な空気のかたまり”を形成

「クールアイランド」とは、樹木の蒸散作用により、まとまった緑地では”島状”に冷気が集まる現象を指しています。

 また緑地は、分散して配置した方が冷却効果がより広範囲に広がり、さらに緑地の連続性を確保することで、気温の低い領域が拡大していくこと期待されています。

 実際に、埼玉県では”ヒートアイランド現象”が顕在化している地域を対象に「クールアイランド効果」を確認する調査を実施しています。(温度実態調査)

 結果、緑地と河川は周辺地域に比べ温度が低く、クールアイランドが形成されていることが確認されました。

 さらに、緑地や河川の風下にも低温域が認められ「冷気の滲み出し現象」も確認されています。

冷涼な空気の移動をスムーズにする

 また上述の通り、樹木は”体温の調節機能”を持たないことから、河川などの冷涼な空気を温めることなく、スムーズに都市部に冷気を運ぶことができます。

 以上のことから、緑地化によりヒートアイランド現象を緩和することが期待されます。

最後に – 街路樹の役割

 本記事では、ヒートアイランド現象と熱帯夜の定義を説明し、街路樹は本当に気温を下げることができるのか!?という点について解説していきました。

 街路樹の植栽による緑地化には、一定のヒートアイランド現象の緩和が確認され、都市部の気温の上昇を抑えることができます。

 また街路樹を植えることで、光合成による温室効果ガス(二酸化炭素)の削減できる点は既知のことです。

 このように、街路樹は”街の景観”を作るだけでなく、その”環境を整える”効果があります。

 本記事を参考に、街路樹についてさらに興味を持って頂けると幸いです。

 以上が「ヒートアイランド現象と熱帯夜の定義を解説!街路樹は本当に気温を下げる!?」になります。最後まで読んで頂きありがとうございます。

Woodyニュース」はTwitterFacebookでも、自然や森林に関する様々なニュースを配信しています。ご興味がある方はフォローして頂けると幸いです。

 またこの記事を読んで、少しでも森林や林業について関心を持って頂けると幸いです。